MEDIROM Healthcare Technologies上場事例分析

日本企業のNASDAQ上場プロセスとコスト構造の実例

株式会社メディロム(Medirom Healthcare Technologies, Inc.)は、2000年に設立されたヘルスケア企業であり、リラクゼーションスタジオ運営を中心に、ヘルスケア研究、ヘルステック事業、フランチャイズ事業など多角的に事業を展開している。同社は国内市場で一定の事業基盤を築いたのち、資本調達および国際的なプレゼンス向上を目的として、NASDAQ Capital Marketへの上場を実行した。本稿では同社の上場事例を基に、米国上場のプロセスとコスト構造を整理する。

企業概要

会社名

Medirom Healthcare Technologies, Inc.

ティッカー

MRM

上場日

2020年12月29日

市場

NASDAQ Capital Market

業種

ヘルスケア

設立年

2000年

1 上場プロセスの概要

メディロムが米国上場を進めたのは2020年9月にDRS(Draft Registration Statement)を提出したことに始まる。その約2ヶ月後の同年11月にForm F-1が提出され、SEC(米国証券取引委員会)とのコメント対応を経て、12月にF-1が有効化された。翌日の12月29日にはNASDAQ Capital Marketに上場している。DRS提出から上場までの期間は約3ヶ月であり、米国上場としては迅速な進行に分類される。

上場タイムライン

2020年9月

DRS(Draft Registration Statement)提出

2020年11月

Form F-1提出

2020年12月

F-1有効化(SEC審査完了)

2020年12月29日

NASDAQ Capital Market上場

DRS提出から上場まで約3ヶ月 - 米国上場としては迅速な進行

このプロセスにおける特性として、SEC審査に対応するための資料修正と再提出を複数回行っている点が挙げられる。外国企業が米国公開市場にアクセスする際は、情報開示の透明性や会計基準への準拠が求められ、相応の準備負荷が発生する。

上場スキームは米国預託証券(ADS)による公開であり、上場時に発行されたADSは80万株、価格は1株あたり15ドルであった。これにより約1,300万ドルの資金調達を実施している。

IPO資金調達サマリー

発行ADS数

80万株

公募価格

$15

調達額

約$13M

2 コスト構造の分析

上場に伴う費用の総額は3,495,685ドル(約3.5億円)である。項目別の内訳は以下の通りである。

費用項目 金額(USD) 割合
SEC登録費用 $2,728 0.08%
FINRA提出費用 $3,605 0.10%
NASDAQ上場費用 $54,973 1.57%
会計関連費用 $1,411,828 40.4%
法務関連費用 $1,719,774 49.2%
ロードショー費用 $49,536 1.42%
印刷費用 $253,149 7.24%
その他 $92 0.003%
合計 $3,495,685 100%

コスト構造の重要ポイント

  • 公式手数料は全体の約2% - SEC、FINRA、NASDAQの公式手数料合計は約6万ドルに過ぎない
  • 専門業務費用が約90%を占める - 会計40.4% + 法務49.2% = 89.6%
  • IFRS/US GAAP対応、英文開示資料作成、法務デューデリジェンスが主要コスト

特徴的なのは、公式手数料(SEC・FINRA・NASDAQ)が全体の数%に過ぎず、会計・法務といった専門業務費用が約90%を占める点である。米国上場においてはIFRS/US GAAP対応や英文での開示資料作成、法務デューデリジェンス等が不可欠であり、これらを支える外部専門家の費用が主な負担となる。日本企業が米国上場を検討する際には、「上場手数料そのもの」よりも「準備・実務負担」に伴う規模感を把握することが重要である。

3 業績推移と資本政策

上場前の2019年12月期売上高は約39.1億円であったのに対し、2022年12月期の売上高は約69.5億円と、上場後に業績は拡大している。この間、同社は上場によって得た資本を活用し、事業領域の拡張と規模の拡大を図っている。

売上高推移

39.1億円

2019年12月期

(上場前)

69.5億円

2022年12月期

(上場後)

約78%の成長(+30.4億円)

2021年4月には、サロンブランド「Ruam Ruam」を運営する株式会社サワンを買収している。本件は追加の資金調達を伴わない形で実施されており、上場により強化された財務体力を活用したM&Aであると解釈できる。事業シナジーの獲得と店舗ネットワークの拡大を目的としている。

主要M&A

2021年4月:株式会社サワン買収
サロンブランド「Ruam Ruam」運営企業を買収。上場により強化された財務体力を活用し、追加の資金調達なしで実行。店舗ネットワーク拡大と事業シナジー獲得を目的とする。

4 上場後の事業戦略

上場後の事業方針として、同社は国内外市場でのリラクゼーションサービス拡大、フランチャイズモデルによる全国展開、マーケティングおよび広告投資によるブランド強化等を掲げている。これらは資本市場での信頼性向上を背景に成長投資を加速させるものであり、NASDAQ上場を契機に成長戦略が明確に外部化されたといえる。

サービス拡大

国内外市場でのリラクゼーションサービスの拡大

フランチャイズ展開

フランチャイズモデルによる全国展開

ブランド強化

マーケティング・広告投資によるブランド強化

5 所見

メディロムのケースは、日本市場で成熟した中堅企業が、米国市場での資金調達とプレゼンス拡大を目的に上場した事例として位置づけられる。米国上場に伴う費用は3.5億円規模と軽くないが、調達額約1,300万ドルに加え、その後の資金調達やM&Aを含む成長機会を鑑みれば、資本政策として合理性を持つ。

また、上場準備期間が短期間で進行している点から、事前の体制整備と専門家活用が適切に行われたことが推察される。日本企業が米国上場を追求する際には、初期費用・継続費用に関する理解に加え、上場後の資本戦略を明確に描くことが重要となる。

MEDIROMケースから学ぶ主要ポイント

✓ DRS提出から上場まで約3ヶ月という迅速な進行が可能

✓ コストの90%は会計・法務の専門業務費用(公式手数料は2%程度)

✓ 上場後の業績拡大(約78%成長)と戦略的M&A実行が可能に

✓ 事前の体制整備と専門家活用が成功の鍵

免責事項

※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の法律・会計・税務アドバイスを構成するものではありません。具体的な案件については、弊社のネットワークから専門家を紹介いたします。

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