クロスボーダーM&Aでは、外国法人を組み込んだ三角合併やスクイーズアウトが用いられるケースが増えています。これらの取引が日本の税務上どのように扱われるかは、組織再編の成否に直結する重要な論点です。
本稿では、税務適格性の判断において特に重要となるポイントを整理します。
1. 事業実態のある外国法人を用いた三角合併は「適格」と認められ得る
外国法人が実質的な事業活動を行っており、日本企業との間に明確な支配関係が存在する場合、当該外国法人を用いた三角合併は税務上の適格合併に該当する可能性があります。
適格性が認められる条件
- 外国法人に実質的な事業活動が存在する
- 日本企業との間に明確な支配関係(50%超の株式保有等)
- 合併後も外国法人が継続的に事業を営む見込み
また、親会社が既に支配関係を構築している中で、少数株主排除のために株式売渡請求(スクイーズアウト)を実施する場合も、その行為自体は適格性判断を阻害しません。
2. 実態のない外国法人を用いる三角合併は「原則非適格」
一方で、事業実態のない外国法人を用いた取引は、租税回避とみなされる可能性が極めて高く、原則として非適格扱いとなります。
特に注意が必要な構造
- 米国などに持株会社(NewCo)を形式的に新設し、その株式を対価として日本法人を合併・取得するスキーム
- 合併後も新設外国法人に実質的な事業活動が存在しないケース
コーポレートインバージョン規制
このような手法は「コーポレートインバージョン」と呼ばれ、国税庁は租税特別措置法66の6-3に基づき厳格な規制を行っています。税負担の軽減のみを目的とした形式的な本社移転は、租税回避行為として否認される可能性が高くなります。
3. 三角合併の留意点:非適格リスクが高まる構造
典型的な非適格リスクの例として、次のようなケースが挙げられます。
典型的な非適格リスクの構造
US法人Xが日本子会社YおよびZを保有
Xの株式を対価としてZがYを吸収する三角合併を実施
しかしXが新設法人(実体なし)の場合、租税回避目的と判断される可能性が高く、適格扱いは困難
法改正以降、このようなスキームに対する規制は強化されているため、実務上の慎重な設計が必須となります。
4. スクイーズアウトは適格判定に影響しない
法人税法2-12-16に定められた手続きを遵守している限り、少数株主の排除(スクイーズアウト)および金銭交付は、税務上の適格性判断に影響を与えません。
税務上の中立性
すなわち、スクイーズアウトは税務上「中立的」な行為であり、適格・非適格の判定とは別次元の論点として扱われます。
スクイーズアウトの主要な手法
株式売渡請求
会社法に基づき、特別支配株主(90%以上保有)が少数株主の株式を強制的に取得する手続き
株式併合
複数の株式を1株に統合し、端数株主に金銭を交付して排除する手法
5. まとめ:三角合併の税務判断で最重要となるのは「事業実態」と「租税回避意図」
Key Takeaways
✓ 事業実態が適格性の決定要因 外国法人に実質的な事業活動があり、継続的に営まれる見込みがある場合、三角合併は適格合併として認められる可能性がある
✓ 新設ペーパーカンパニーは原則非適格 実態のない外国法人を形式的に設立するコーポレートインバージョンは、租税特別措置法66の6-3により厳格に規制される
✓ スクイーズアウトは税務中立 法定手続きに従った少数株主排除は、適格・非適格の判定に影響を与えない別次元の論点である
✓ 実務上の慎重な設計が必須 法改正後、税務当局の審査は厳格化。専門家と連携し、租税回避意図がないことを明確に立証できる構造設計が重要
クロスボーダーM&Aの税務適格性判断をサポート
三角合併・組織再編の税務リスク評価、事業実態の立証支援、租税回避リスクの診断など、NASDAQ上場企業のクロスボーダー取引を包括的にサポートいたします。
お問い合わせ