米国市場への上場プロセスにおいて、契約書のボリュームや詳細な取り決めに驚かれるケースは少なくありません。これらは、相手方の不信感によるものではなく、日米における法体系の構造的な違いに由来するものです。

1. 法体系のアプローチ:大陸法と英米法

日本(大陸法):条文による包括的な規律

日本は条文を重視する「大陸法」を基礎としています。民法や商法が包括的なルールを定めているため、契約書に詳細な記載がなくとも、法律による補完や解釈が期待できる側面があります。

米国(英米法):判例と契約の積み上げ

米国は判例を重視する「英米法」を採用しています。個別の事象や過去の判例が重視されるため、当事者間の合意事項を契約書内で網羅的に定義する(契約書自体をルールブックとする)傾向が強くなります。

ポイント

法体系の違いは「契約書の厚さ」に直結します。英米法の国では、すべての合意事項を契約書に明記することで、後の紛争を未然に防ぐことが重視されます。

2. 実務面での共通性と安心感

法的なアプローチの出発点は異なりますが、上場企業に求められるガバナンスの実務は共通しています

現在の日本の金融商品取引法や会社法は、米国の諸制度を参考にしてきた歴史的経緯があります。そのため、日本企業様がこれまでに培われたコンプライアンス体制やガバナンスの知識は、米国市場においても十分に通用する強力な基盤となります。

日本企業の強み

日本企業が構築してきた内部統制、財務報告体制、コンプライアンス意識は、NASDAQ上場においても高く評価される資産です。法体系の違いを理解した上で、既存の強みを活かすことが成功への近道となります。

3. 米国契約実務における留意点

米国での交渉を円滑に進めるために、以下の背景をご理解いただくと有益です。

契約書の網羅性(口頭証拠排除原則など)

米国契約法には、最終的な契約書に記載されていない合意事項(過去の口頭約束など)は、証拠として採用されにくいという原則があります。後々の認識齟齬を防ぐため、あらゆる合意を書面に落とし込むプロセスが重要視されます

注意:口頭証拠排除原則(Parol Evidence Rule)

「契約締結前の口頭合意」や「メールでのやり取り」は、最終契約書に記載がない場合、原則として法的効力を持ちません。すべての重要事項は、必ず最終契約書に明記する必要があります。

変化への柔軟な対応

判例をベースとする米国の法システムは、新しい技術やビジネスモデルに対して、裁判所の判断を通じてスピーディにルールを形成しやすい特徴があります。これは、変化の速い先端企業にとって、事業環境としてのメリットになり得ます。

イノベーション企業に有利な環境

米国の法体系は、新しいビジネスモデルやテクノロジーに対して、判例を通じて柔軟に対応します。これにより、先端企業は法的な不確実性を最小限に抑えながら、革新的な事業を展開できます。

4. まとめ:違いを理解し、強みを活かす

米国市場への挑戦は、単なる法規制への対応ではなく、グローバルスタンダードな契約概念への適応プロセスです。

ルールの明確化

「大陸法」と「英米法」の違いを理解し、契約書の網羅性を高めることは、貴社のビジネスを法的リスクから守る最強の盾となります。

強みの再定義

日本企業が培ってきたガバナンス体制は、米国市場でも共通して通用する強力な資産です。自信を持って活用してください。

柔軟性の活用

判例法に基づく米国の柔軟な法システムは、イノベーション企業にとって追い風です。

法的な差異を障壁と捉えず、事業を加速させるための「共通言語」として習得することが、NASDAQ上場成功への第一歩となります。

免責事項

※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の法律・会計・税務アドバイスを構成するものではありません。具体的な案件については、弊社のネットワークから専門家を紹介いたします。

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