日本企業による米国 IPO は、事業規模や業種に関わらず、資本調達・信用力・ブランド価値の大幅な向上を実現できる強力な選択肢です。rYojbaba Co., Ltd. の事例は、労働支援×ヘルスケアというサービス領域の企業であっても、適切なプロセス管理と開示体制を整えることで、NASDAQ 上場を実行できることを示しています。本記事では、同社の実際の SEC 申請書類(Form F-1 / Form 6-K)を基に、日本企業が米国 IPO を実現する際の実務プロセスを体系的に整理します。
企業概要
会社名
rYojbaba Co., Ltd.
ティッカー
RYOJ
上場日
2025年8月14日
上場市場
NASDAQ Capital Market
業種
労働支援・ヘルスケア
上場スキーム
F-1(IPO)
調達額
約3.89M USD(手数料控除後)
IPO価格
$4.00
1 F-1 提出:米国 IPO の正式なスタートライン
rYojbaba は 2024 年 8 月に SEC へ Form F-1 を提出し、NASDAQ Capital Market 上場に向けた登録を開始しました。
F-1 で必ず開示される項目
事業内容
事業内容・市場環境・リスク要因の詳細開示
財務情報
US GAAP による財務情報の完全開示
ガバナンス
大株主・ガバナンス体制の透明性確保
資金使途
調達資金の使途の明確化
公募内容
公募株数および想定価格の提示
収益構造
労働支援・整骨院事業の収益構造
F-1 提出後は、SEC から複数回のコメント(修正依頼)が届き、これに対し短期間で正確に対応することが求められます。このフェーズの品質が IPO 成功率を大きく左右します。
2 SEC 審査(コメントプロセス):最も負荷の高い工程
SEC の審査では、主に以下が確認されます。
SEC 審査の主要確認項目
会計処理の妥当性
US GAAP に準拠した会計処理
取引の完全開示
取引の開示が完全であるか
契約の透明性
契約・関連当事者取引の透明性
リスク開示の網羅性
リスク要因の完全開示
経営陣の資格
経営陣の資格・経歴の確認
資本構造の整理
資本構造および議決権の整理
Controlled Company の活用
rYojbaba のケースでは、CEO が 80%超の議決権を保有しているため、"Controlled Company" として ガバナンス要件の一部免除 を適用できる構造でした。これは、上場前のコストと体制整備の負荷を軽減する実務的な選択肢です。
3 Form F-1「有効化」:IPO 実行の条件が整う
SEC の審査が完了すると、"Form F-1 is declared effective(有効化)" となり、IPO 実行が可能になります。
F-1 有効化プロセス
2024年8月
Form F-1 を SEC へ提出
2024年8月〜2025年7月
SEC コメントプロセス(修正・対応の繰り返し)
2025年7月31日
Form F-1 有効化(Effective)
有効化時の確定事項
- 公募価格:$4.00
- 発行株数:1,250,000 株
- Underwriter 契約確定
- 424B4(最終目論見書)提出
このタイミングで公募条件が確定し、ロードショーを経て NASDAQ 上場へ進みます。
4 NASDAQ 上場(2025年8月14日)
rYojbaba は NASDAQ Capital Market に "RYOJ" として上場しました。
調達資金(約 389 万ドル・手数料控除後)の使途
労働支援サービスの IT 化
整骨院・美容サロンの M&A
国内外への店舗拡大
人材採用・研修体制整備
NASDAQ 上場により同社は、米国投資家へのアクセス・企業ブランド向上・海外展開基盤の確立という大きな成果を得ました。
5 上場後:Form 6-K での開示義務とガバナンス運営
米国上場企業は、重要事項が発生するたびに Form 6-K を提出する必要があります。rYojbaba も上場後に迅速な開示を行っています。
主な Form 6-K 開示内容
監査法人の変更
TAAD LLP → GuzmanGray へ交代。上場後の監査負荷に対応した体制再構築。
CFO の退任と CEO による暫定兼務
経営管理体制をスリム化しつつ、財務開示の継続性を確保。
戦略提携の拡大
外国人技能実習支援企業 Poly Group との提携や、海外社会貢献プロジェクト(GGI)とのパートナーシップを発表。
これらの開示は NASDAQ 上場企業としての透明性と信頼性の維持 に直結します。
6 本事例から読み取れる「成功する米国上場の要件」
rYojbaba のプロセスは、日本企業が米国上場を実現する際に必要な要件を明確に示しています。
F-1 の質と SEC コメント対応
F-1 の質と SEC コメント対応のスピードが最重要。これを誤ると上場は大幅に遅延します。
上場後の開示運営
上場後の開示運営までを含めて IPO を設計する。Form 6-K は継続義務であり、上場がゴールではない。
ガバナンス設計の重要性
ガバナンス設計(Controlled Company を含む)が上場戦略の鍵。日本企業特有の資本構造をどう米国基準に適合させるかが問われる。
資金使途の一貫性
調達資金の使途が"成長戦略と一貫していること"。市場が評価するのは「資金で何を実現するか」。
7 まとめ:rYojbaba は日本企業の"実務モデルケース"となる
rYojbaba の NASDAQ 上場は、F-1 → Effective → Pricing → IPO → 6-K(開示)という米国 IPO の基本プロセスを示す、非常に分かりやすいケースです。
rYojbaba の上場プロセスが示す重要なポイント:
- 労働支援×ヘルスケアというサービス企業でも米国IPOは実現可能
- F-1提出からIPO実行まで約12ヶ月(2024年8月→2025年8月)
- Controlled Company として効率的なガバナンス体制を構築
- 上場後も Form 6-K で継続的な情報開示を実施
- 調達資金を成長戦略(IT化、M&A、店舗拡大、人材採用)に一貫して活用
rYojbabaの事例は、日本企業による米国IPOの
「実務プロセス」を体系的に示す教科書的な事例です。
事業規模や業種に関わらず、適切なプロセス管理と開示体制を整えることで、
NASDAQ上場は十分に実現可能であることを証明しています。