NASDAQ上場スキームと定款実務
NASDAQへの上場(F-1申請)にあたっては、日本の法規制(外為法・会社法)と米国の実務慣行のバランスを考慮し、適切なスキームを検討することが重要です。多くの企業様が検討される「スキーム選択の考え方」と、公開企業へ移行する際の「定款変更の要点」について解説します。
1 「普通株」か「ADR」か? スキーム検討の目安
日本企業がNASDAQへ上場する手法として、主に「普通株(Common Stock)の直接上場」と「ADR(米国預託証券)による上場」の2つが挙げられます。
どちらの手法が適しているかは、貴社の「事業内容(外為法)」や「金融機関との調整状況」などを総合的に判断する必要があります。
直接上場による資本市場へのアクセス
- 海外投資家が直接株主となる
- ADR組成プロセスが不要
- 比較的スムーズな上場準備が可能
- 近年、事例が増加傾向
適している企業:安全保障への関連性が低い業種、迅速な上場を目指す企業
預託銀行を介した間接的な上場形態
- 形式上の株主が「預託銀行」となる
- 外為法管理実務の負担軽減の可能性
- 発行体・保管銀行・預託銀行間の契約が必要
- 信託銀行との調整に時間を要する場合がある
適している企業:外為法規制業種に該当する可能性がある企業、管理実務の簡素化を重視する企業
① 「外為法」の観点:事業内容による確認
判断の一つの目安となるのが、「外国為替及び外国貿易法(外為法)」です。
貴社の事業が、国の安全保障に関わる特定業種(武器、原子力、宇宙開発、重要インフラ、特定技術等)に該当する場合、外国人投資家による株式取得において、所定の手続き(外為法第27条等)が必要となるケースがあります。
普通株での直接上場の場合、海外の投資家が直接株主となるため、外為法に基づく届出等の管理実務が煩雑になる可能性があります。
一方、ADR(米国預託証券)を活用した場合、形式上の株主が「預託銀行」となるスキームであるため、実務上の管理負担を一定程度軽減できる側面があると考えられています。
安全保障への関連性が低い業種であれば、近年事例が増えている「普通株の直接上場」も有力な選択肢となり得ます。ADR特有の組成プロセスを省略できるため、比較的スムーズな上場準備が可能になる場合があります。
② 「信託銀行」との連携:実務インフラの準備状況
ADRを発行する場合、「発行体(貴社)」、「保管銀行(日本)」、「預託銀行(米国)」の間で契約を締結する必要があります。
特に未上場の段階では、国内の信託銀行との調整に一定の時間を要するケースも少なくありません。
銀行間連携の調整が必要なADRではなく、「普通株」での上場を選択することで、関係各所との調整期間を短縮し、IPOスケジュールの確実性を高めるという判断も、一つの有効な戦略と考えられます。
2 公開企業に向けた「定款」の見直し
F-1(有価証券届出書)の提出に向け、現在の定款を上場企業(公開会社)としてふさわしい内容に見直すことが一般的です。
日本の会社法(Kaisha-ho)に基づき、主に以下のような項目の変更が検討されます。
会社法第127条
非上場企業の多くは、株式の譲渡について取締役会の承認を要する定めていますが、上場にあたってはこの制限を撤廃し、市場での自由な売買を可能にすることが一般的です。
これは、より広く投資家を受け入れる体制へと移行することを意味します。
会社法第299条・939条
日本の会社法上、非公開会社の株主総会招集通知は「1週間前」で足りますが、NASDAQ上場後は海外の株主が増えることが予想されます。
郵送期間や議決権行使の検討期間を考慮し、「2週間」あるいはそれ以上の期間を設けることが望ましいとされています。
また、公告方法についても、海外からのアクセス性や透明性を考慮し、官報から「電子公告(自社ウェブサイト)」へ変更するケースが多く見られます。
上場時の資金調達(IPO)や、将来のM&A、ストックオプションの発行などに備え、あらかじめ定款上の「発行可能株式総数(授権枠)」を拡大しておくことが推奨されます。
会社法上、発行枠の設定は自由ですが、実務的には上限値となる「発行済株式数の4倍まで」を目安に設定し、機動的な資本政策に対応できる準備を整えておく企業様が多い傾向にあります。
会社法第327条・第123条
公開会社への移行に伴い、取締役会の設置に加え、「株主名簿管理人(信託銀行等)」の設置が必要となります。
多数の株主を適切に管理するため、専門機関を活用した管理体制を構築し、定款にその旨を定めることが一般的です。
3 法務と市場をつなぐサポート
NASDAQ上場においては、日本の法規制と米国の市場ルールの双方を考慮した準備が求められます。
弊社がご提供するサポート
事業内容に基づき、ADRと普通株のどちらが適しているか、法的な観点を含めて検討を支援します。
日本法を遵守しつつ、海外投資家にも受け入れられやすい定款案をご提案します。
選択したスキームに合わせ、投資家への訴求方法を共に検討します。
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