はじめに

NASDAQは、米国を代表とする株式市場の1つで、特にハイテク企業が多く上場していることで知られています。近年、こうした成長企業を含む市場で「ESG投資」(環境・社会・ガバナンスを重視する投資手法)が広がりを見せ、投資家にとって新たな視点が求められるようになりました。本記事では、NASDAQの特徴を整理しつつ、ESG投資との結びつきをわかりやすく解説しながら、将来的に持続可能性を重視した投資戦略を考えるためのヒントを提供します。
*本記事は04/03/2025現在の情報を元に作成したものです。

NASDAQとは

⚫︎特徴
NASDAQは、1971年に世界初の電子株式取引所として設立され、米国の主要な証券市場の1つです。特にハイテク・IT関連の企業が多く、AppleやMicrosoftなどの巨大IT企業も上場しています。2025年時点では、3,400社以上が上場しており、成長企業やイノベーション主導型の企業を多く抱える市場として、世界中の投資家から注目されています。

⚫︎日本の株式市場との違い
日本の株式市場(東証)と比較すると、NASDAQは新興企業やハイテク業種の比率が高く、イノベーション重視の企業が多く集まっています。上場基準や審査のプロセスにも違いがあり、NASDAQでは利益計上実績がなくても一定の時価総額や株主数、資産額を満たせば上場が可能なのに対し、東証は通常、継続的な利益・純資産の黒字や株主数、売上高などの要件を求めます。さらに、NASDAQは英語での開示と米国基準の会計監査が必要であり、内部統制やコンプライアンスに対する要求も異なります。このため、海外展開志向や成長性を重視する企業にとって、NASDAQは柔軟かつ魅力的な上場先となっています。

なぜESG投資でNASDAQが注目されているのか

⚫︎ハイテク企業のイノベーションとESGの親和性
ハイテク企業は、再生可能エネルギーや省エネ技術、サステナブルな製品開発などを通じて、社会課題の解決に直接関与するケースが多く、ESGの観点と親和性が高いです。

⚫︎多様性と包括性を重視する企業
NASDAQ上場企業には、性別・人種・バックグラウンドを問わず、多様な人材を積極的に採用し、組織の競争力や創造性を高めている企業が多く存在します。

⚫︎情報開示やガバナンス体制
NASDAQは、情報開示に積極的な企業が多く、ESG関連のレポーティング体制が整っている点も投資家からの信頼を集める理由です。ガバナンス体制の強化も進められており、透明性や説明責任が重視されています。

ESG投資のメリット

⚫︎安定した中長期リターンの実現
ESGに積極的に取り組む企業は、環境負荷の低減や労働環境の改善などを通じて、長期的な持続可能な成長を目指しています。こうした企業は、短期的な利益を追求する企業と比べて、事業の安定性や収益の持続性が高く、結果として投資リターンも安定する傾向があります。実際に、MSCIなどの調査でも、ESGスコアの高い企業は市場全体よりもリスク調整後のパフォーマンスが高い傾向が示されています。

⚫︎非財務リスクの早期発見と軽減
従来の財務分析だけでは見えにくいリスク(ex. 環境規制の強化、人権問題、社内不正など)も、ESGの視点を取り入れることで早期に検知・評価できます。このようなリスクは一度表面化すると株価急落や訴訟につながるケースもあるため、ESG情報のチェックはリスク管理の観点でも有効です。

⚫︎社会課題の解決へ貢献
ESG投資は「利益を得ながら社会に貢献する」という、経済的リターンと社会的リターンを両立できる手段です。例えば、再生可能エネルギーに投資すれば、温室効果ガスの削減に貢献しつつ、成長産業の利益も享受できます。こうした投資行動は、自身の資産形成だけでなく、未来の世代に価値を残すアクションとも言えます。

ESG投資のポイント

⚫︎企業の透明性と情報開示
企業のESGへの取り組みを評価する上で、データやポリシー、実績などの開示レベルは重要な判断材料となります。NASDAQでは、ESGレポートを公開する企業が増えており、投資判断を大きくサポートします。

⚫︎長期的視点の重要性
ESG投資は、短期的な株価変動よりも中長期的な企業価値の成長に着目するスタイルです。環境・社会問題への対応やガバナンス体制を重視することで、長期的な安定収益が見込まれます。

⚫︎社会課題解決への貢献
投資先企業がどれだけ社会的インパクトを持っているかも大切な評価軸です。クリーンエネルギー、教育、医療、格差是正などの分野で価値を提供する企業は、ESG投資家からの関心が高まっています。

ESG投資に適したNASDAQ銘柄の選び方

⚫︎企業評価のチェックポイント
ESG投資で企業を選ぶときは、「この企業がどれだけ環境や社会に配慮し、健全な経営をしているか」を多面的に見ることが大切です。そのために活用されるのが、ESGスコアやサスティナビリティ評価と呼ばれる外部指標です。代表的なスコア提供会社には、MSCI、Sustainalytics、ISS ESGなどがあります。
スコアは主に以下のような視点で評価されています:
・環境 (E) : CO2排出の削減、再エネ活用、廃棄物管理など
・社会 (S) : 人権・労働環境、ジェンダー平等、地域貢献など
・ガバナンス (G) : 経営の透明性、取締役会の構成、内部統制など
ただし、各社のスコアは評価基準や重視するポイントが異なるため、単純な点数の高低だけでなく、その中身を見ることが重要です。

⚫︎業種・セクター別の特性
NASDAQには、ITや医療、クリーンテックなど、さまざまな業種の企業が上場していますが、ESG投資の際には業種によって注目すべきポイントが異なります。
・IT・ソフトウェア:プライバシー保護やAIの倫理的活用が問われます。
・半導体:製造時のCO2排出量や水資源の使い方が焦点になります。
・通信:データの安全性や表現の自由にどう対応しているかが重要です。
・ヘルスケア・バイオ:医薬品のアクセス格差や臨床試験の倫理性が問われます。
・クリーンテック:本当に環境に優しいビジネスモデルであるかが問われます。
このように、業界におけるマテリアリティ(企業・組織にとっての重要課題)を知っておくと、目的に合った企業をより見つけやすくなります。「環境を重視したいのか」「社会課題の解決に貢献したいのか」など、自身の投資方針を明確にし、その軸に合った業種や企業を選ぶことが、ESG投資においてとても重要です。

⚫︎事業リスクへの影響
企業の「ESG対応」が将来の利益や事業リスクにどう影響するかという視点も欠かせません。例えば、
・ESGリスクがコスト増に繋がっていないか
・ESG施策が中長期の競争力に繋がっているか
などを読み取ると、より立体的な企業評価ができます。

おわりに

NASDAQは、ハイテク企業やイノベーション企業を多く抱える成長市場であり、ESG投資との相性も極めて高い市場です。透明性・多様性・持続可能性といった要素を軸に、長期的な視点で企業を見極めることで、安定的かつ社会的価値の高い投資を実現できるでしょう。これからESG投資を始める方や、ポートフォリオにNASDAQ銘柄を取り入れたいと考える方にとって、有力な投資先となり得ます。これからも、新たな市場の可能性を探る手助けとなるよう、情報を提供して参ります。

また、弊社では日系企業のNASDAQ、NYSE American上場のサポートをさせていただいております。記事をお読みいただき、もっと詳しく話を聞きたいという方はお気軽に弊社までご連絡ください。
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